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CGなしで非現実的な世界を作った映像5選

こんにちは。Production Design TeamのMinjungです。
私たちのチームは主に、LINE及びLINE関連のサービス全般の映像・スチール・インタラクティブ、プランニング、監修に携わっています。
そこで、今回は、LINEのデザイナーがクリエイティブなアイデア(Creative idea)に対するインスピレーションを得たい時に参考になりそうな作品を紹介したいと思います。

最近の映像制作では、デジタル技術とCGに基づくVFX(Visual Effect)を用いた作業が活発に行われています。今は多くの映画がVFXを積極的に活用しながら、実際にセットを製作しなくても想像上の都市を建設したり、仮想のキャラクターを作って出演させるなど、ますます幅広い分野で様々なものを創造しています。
しかし、時にはCGではなく実際にセットを製作して撮影した映像から何か特別な感情を感じることはありませんか?
緻密に組み立てられた演出と振り付け、精巧に製作された舞台装置、絶妙な編集技術を駆使して、特殊効果やCGで作り出した仮想世界よりも非現実的な世界を作り出した映像5本をご覧ください。

 1.Weapon of choice/ Fatboy Slim/ Director Spike Jonze/ 2001

- ディープフェイク技術を使わず、俳優が直接出演して演技

主人公役のクリストファー・ウォーケンさんはバットマン リターンズ、パルプ・フィクション、スリーピー・ホロウなど多くのアメリカの映画に出演した俳優であり、映画が好きな方なら見慣れた顔だと思います。謹厳に見える外見、上品な衣装もすべてエレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)には似合わず、ディープフェイク技術を精巧に使用した映像のように見えますが、実際に、クリストファー・ウォーケンさんが演技したものです。映像に出演した当時、年齢は57歳だったそうですが、彼は1950年代からクラブ、テレビ、ブロードウェイミュージカルで活動した専属ダンサー出身でした。実際に行ったインタビューで、EDMに合わせて踊ったことが楽しい経験だったと語っています。この映像はLAのMarriott Hotel(現在はthe L.A. Grand Hotel Downtown)で撮影されましたが、映像に登場する鏡でできた長い廊下は撮影のために製作されたそうです。これに関して下記の映像で説明されています。他に映像の企画からクリストファー・ウォーケンさんの出演にまつわる話や制作と関連したエピソードを監督の語りで聞くことができます。

2.Welcome Home feat. FKA twigs/ HomePod(Apple)/ Director Spike Jonze/ 2018

- Virtual Studioを活用したコンピュータグラフィックの背景ではなく、実際に動くセットを製作

短編映画またはミュージックビデオに近い形式で制作されたApple社のHomePodの広告映像です。
CGで制作された仮想世界のように見える空間は、美術チームによって作られたリアルなセットです。このセットは物理的に作動するように製作されており、音楽や振り付け、カメラワークに合わせてセットの動きを計算し、実際に作動するように作られました。FKAツイッグスさんの素敵な演技と美しい振り付け、完璧にデザインされたセットが音楽と1つになって絶妙に編集されたこの映像は、どのグラフィックよりも非現実的なビジュアルを見せてくれます。
こちらも下記の動画で制作準備過程からセットの作動方法まで詳しく説明されています。特にセットの裏でFKAツイッグスさんの動作に合わせるために、ちょこちょこと人の力で動かしている点が面白いです。

3.The Hardest Button to button/ The White Stripes/ Director Michel Gondry/ 2003

- ストップモーションの人形の代わりに人が直接動いて物を移動させる

粗いサウンドに合わせた演出と編集が印象的なこちらの映像は、「Pixilation(ストップモーションの技法でダミーの代わりに実際に人が演技する方式)」という技法を用いています。音楽に合わせて精巧に計算された演出と編集された映像が音楽のビートと絶妙に調和し、ザ・ホワイト・ストライプスさんならではの独特なサウンドをより際立たせています。
実際の撮影は逆順で進められたそうです。まず、スタッフがすべての機材を配置した後、前方の機材から1つずつカメラのアングルの外に撤収させ、それと同時にミュージシャンが逆方向に移動する方式で撮影しました。機材には全部で32台のドラムセットと32台のアンプ、16本のスタンドマイクが使われています。撮影はすべて自然光で行われたので、映像で影の動きを通して時間の流れを見ることができる点も面白いと思います。このように撮影された映像は、編集過程でビートに合わせて作り直していくことでリズム感のあるダイナミックな映像に仕上がります。監督がこの映像を制作した当時、一番大変だった所は、ジャック・ホワイトさんがコンセプトを理解できなかったため、彼を説得することだったそうです。短い映像ではありますが、下記の監督のインタビュー映像通じて、これにまつわる制作ストーリーを直接ご覧いただけます。

※余談ですが、このミュージックビデオは当時かなりの話題になり、アメリカのアニメ「ザ・シンプソンズ」 でそのまま再現されました。

また、映像でジャック・ホワイトさんが腕にギプスをしているのは演出ではなく、旅行中の交通事故で本当に怪我をしていたからだそうです。 

4.Let Forever Be/ Chemical brothers/ Director Michel Gondry/ 1999

- モーショングラフィックの効果のように見える様々な小物とセットを製作して撮影した後、絶妙な編集技術を活用

「オアシス」のノエル・ギャラガーさんのボーカルとしても有名なこの歌は、主人公のダイナミックな悪夢を独特な映像で表現しています。完璧に計算され精巧に組み立てられた映像の構成、俳優の動線と振り付け、そして絶妙な編集を活用して現実と夢の間の曖昧な境界を視覚的に表現しています。監督は、過去に使用されてきた伝統的な演劇的表現手法を借用しながらも、これをEDMに調和するよう現代的に再解釈して演出しました。
この映像は次の2作品から影響を受けたと言われているので、あわせてご紹介します。技術の限界を超えるために使われた過去の方式を借用しながら、ミシェル・ゴンドリー監督ならではの方式でそれを再解釈し、独創的で新しい表現技法を作り出したのではないかと思います。
 
1)[Musical] I Only Have Eyes For You/ Dames/ Director Ray Enright & Busby Berkeley/ 1934

2)[TV Show] Starmaker/ The Kinks/ Director Peter Plummer/ 1974

また、短い映像ですが、こちらから映像の制作過程をご覧いただけます。

5.This Too Shall Pass/ OK Go/ Director James Frost ,OK Go and Syyn Labs/ 2010

- 3D Animation 映像に登場しそうな機械装置を実際に製作し、成功するまで挑戦し続ける

毎回思いがけないパフォーマンスで楽しさを与えることで有名なOK Goさんは、ミュージシャンというよりは多様な分野とのコラボレーションを通じてユニークな映像を生み出す創作集団に近いと思います。この映像はあまりにも有名なので、一度はご覧になったことがあるでしょう。彼らはこの映像のために、2階の高さの倉庫に700個以上のガラクタを使って巨大な「Rube Goldberg Machine(ピタゴラスイッチのような装置) 」を製作しました。そして、これの操作過程を1台のステディカムを使ってワンショットで撮影しています。この装置は各段階別に、自分たちの音楽に合わせて作動時間まで精巧に計算されて設置されました。より詳しい制作過程は、メンバーが直接語っているこちらの映像でご確認いただけます。

また、彼らはこうした実験と挑戦が子供たちに多様なインスピレーションを与えることができると考えており、この作業を教育活動で活用できるように情報を提供しています。自分たちの作業過程と様々な設置物の作動原理に関する説明とともに、子供たちが直接新しい創作物を作れるように様々な資料を公開しています。

 最後に

ご紹介した映像から感じられる特別な感情は、単にこれらが与える創造的なアイデアと視覚的な楽しさからきたものではないと思います。今では、独特な方式になってしまったアナログな撮影は、いつも人々の想像力を刺激し、時には技術的に完璧に再現されたデジタル仮想世界よりも、さらに効果的に作用することもあると思います。もしかしたらその作用は、想像や仮想世界でのみ実現可能だと思っていた何かが、誰かの努力を通じてついに現実に再現されたことに対する、人間として感じるやりがいに共感したのかもしれません。クリエイティブなアイデアが作られる過程には必ず限界があって、その限界を超えた瞬間が人々の心を動かすのではないでしょうか? 

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